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ホーム → ■紫砂泥の発掘から壺の成型まで

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 紫砂泥は五色土、富貴土とも呼ばれます。紫泥、紅泥と本山緑泥の3つの基本的な土から構成されます。江蘇省宜興市丁蜀の黄龍山、任墅西香山付近と伏東あたりで採れます。90年代の台湾全土の紫砂壷ブームで、供給が需要に応じきれない(供不応求)現象がしばらく続いていました。宜興へ行った事がある人はきっと見たか聞いた事があると思いますが、黄龍山という有名な山は名前だけがあって、山自体が「へえ?これって山!?」という状況です。本来、山は高さ数百メートルとか数千メートルぐらいの立派な物ですが、紫砂泥の採掘で黄龍山が地下深くまでは勿論の事、地上の山自体もなくなるまで掘られ、残ったのは所々の丘、平地と掘りすぎて出来た湖?(雨が降って水溜まるから湖に見える)です。

元となる黄龍山がここまで(丘や湖になってしまう)なると、うわさがうわさを呼びます!巷では「宜興にはもう紫砂泥がなくなりました」とか、今は「採掘した岩に薬品をかけて溶かして泥として使っています」とか......Aさんの話がBさんの所に伝わると話に尾ひれをつけて、誇張されて行きます。呆れるほど噂話しが飛び交います。一方、宜興では一部の作家が「純朱泥」とか、「底槽青」とか、「沈香泥」とかを(平気でウソ)アピールして100、200元の価格で作品を販売しているのを見て、市場がますます混乱し、紫砂壷不信という現象まで起きてしまいます。
確かに何処の国(或いはどの業界)にも悪質業者はいます。しかし、ごく一部です。多くの作家さんが真面目に頑張っている事を忘れないで欲しい。注:肩書き(助理工藝美術師など)を偽る事は一種の風潮のようになっていますので、宜興では「悪」ではないようです(笑)。

中国でも「賣瓜的説瓜甜、賣花的説花香」(自社製品の欠点を言わず)が常識なので、宜興の作家に今の紫砂泥のホンネを聞いても無駄(本当の事を教えてくれない)だろうと思い、老地方茶坊はここ1年半に7回も宜興を訪ね、延べ60日もの滞在をして来ました。滞在中に紫砂泥に関する独自の調査を色々して来ました。その一部を公開して行きたいと思います。紫砂壷の販売店で宜興に長期滞在し、調査した結果をネットに公開しているのは日本では老地方茶坊だけだと思います。
   
 上の写真は紫砂壷の世界で有名な黄龍山です。紫砂の採掘は今も続いています。掘った紫砂泥は総て紫砂壺の制作に使えるわけではなく、千分の一が紫砂壷の製作に、残りは花盆、カメなどの製作・製造に使われます。宜興の街を歩き廻れば分かると思いますが、花盆とカメが丁山街中の至る所にあります。

写真の通り、黄龍山はもう山ではなく、低い丘になってしまいました(笑)。そして、採掘は上だけではなく、石炭採掘と同じ要領で、地下深くまで掘って行きます。底から有名&希有の紫砂泥が出て来ます。地下鉱が封鎖されると「もう宜興には紫砂が無くなりました」という噂が広がり、現地へ行った事無い人は信じ、話に尾ひれをつけて次の人に話して行きます。井戸端会議やインターネットの掲示板に紫砂泥に関する噂が頻繁に登場して来ます。
   
 地元の炭坑夫(採掘員)にお願いして、バケツ、ハンバー、ヘルメットなどの道具を持参して白泥、石黄などを掘ってきました(一番上の紫砂泥の写真を参照)。層が軟らかいので非常に危険な作業です。また、黄龍山・青龍山へ行ったからと言って、勝手に採掘したら怒られますので注意して下さい。
   
 
 日本初。超有名な四号井の写真です↑。残念ながら現在は閉鎖中です。この四号井から数え切れない程の良い紫砂泥が発掘され、名人達の手によって素晴らしい作品に生まれ変わりました。
四号井は閉鎖してもうかなりの歳月を立ち、紫砂鉱石を運ぶ車が錆び、またレールがもう見えないぐらいに雑草が生えています。非常に淋しく感じました。台湾の紫砂壷ブームが崩壊した以上、もう無理かもしれません。
地下から水が湧き出るとおしまいですと案内してくれた人が言いましたが、「場所を変えてら新しく掘っちゃダメ?」と幼稚が質問をぶつけました。すると「可能です。しかし、そんな大金が何処から?投資する人を探してくれますか?」と笑われました。うん、スポンサーを探さないと(爆)。地下に眠っている紫砂鉱が「私達も発掘して」と叫んでいる声が聞こえて来ます。(^^)
   
   
 
 貴重の写真がたくさん撮り、また紫砂原石も色々採りました。勿論、サンプルの一部を日本に持って帰りました。(^^)
日本の陶芸に使われる粘土と宜興紫砂泥の価格もついてに書いておきます。まず、日本の陶芸では一番ポピュラーに使われている信楽粘土は1キロで90円ぐらいで、本備前土は1キロ280円なので、約3倍ぐらいの価格差です。しかし、宜興では安い熟泥の価格は1キロで30円前後と、貴重な紫砂泥は1キロなんと2,500円をする物もあります!恐ろしい価格差です。

宜興へ行けば、どの作家も必ず「うちは他所と違って良い紫砂泥を使っています」。更に詳しく聞けば、底槽青、天青泥、純朱泥、沈香泥、趙荘紅泥とその良さをアピールするのに必死です(笑)。あるわけないだろうと、少しでも現在の宜興を知っておけば、ウソである事がすぐ分かります。まあ、向こうも生活がかかっていますので、多少の誇張は大丈夫だろうと考えているようです。

知識がなければ当然、紫砂泥販売店も作家から聞いた情報を元に、この作品はいかに素晴らしい紫砂泥を使っているかをアピールします。一方、巷では格安の商品壷(業界ではゴミ壷)はレンガに使う土を使っているのではと噂されています。
今は古壷や文革壷とアピールしている怪しい物や、蒋蓉、徐漢棠、陳国良、劉建平、高振宇......などのコピー商品(しかも粗悪!)が日本にも入り、販売店が知っているかどうかは分かりませんが、国家級大師の作品が2、3万円で販売しているサイトも存在します。爆笑するしかありません!......やがて日本も台湾と同じく、紫砂壷不信がやってくるのでは?!
   

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