中国茶の世界

ホーム → ■紫砂壺の「驚破」現象

下ろす作業

紫砂造型

壺の模写
 
 
 驚破!経験した事ない人には理解できない現象(言葉)ではありますが、経験したくない現象でもあります。
さあ、おいしいお茶を飲もうとお気に入りの朱泥壷を用意し、蓋を取り、お湯を注いだら「ばきっ」という音が聞こえて来ました。イヤな音やなあと思いながらも、何が起きたのかがサッパリ分かりませんでした。暫く経って茶壷からお湯が漏れているのを見て、初めてあのイヤな音が茶壷が割れた時の音だと理解できましたと同時に、唖然として言葉を失いました!初めて経験した「驚破」現象に身体が固まりました。

そう言えば、何回かガラスコップにお湯を注ぐと割れた事を思い出しました。ガラスコップの場合、1個数百円なので、何も考えずにすぐ捨ててしまいました。ガラスコップに急激な熱の変化を与えると破壊を招くとガラスメーカーのホームページにも書いてあります。同じ事が茶壷に起きたのか、と納得すると同時に解消する方法がないかを模索し続けて参りました。こんな事が繰り返されては悲し過ぎますから。

紫砂壷の焼成収縮率は使われる泥の種類によってまちまちです。10パーセント未満の物もあれば、30パーセントを超える究極の物もあります!30パーセント?!考えて見れば恐ろしい収縮率だと理解できるはずです。100mmの物が焼成後に60数mmに縮んでしまう事ってあり?という感じでした。それをいきなり熱湯をかけると「熱膨脹」します。しかし、外側の温度が冷たいまま、特に冬場などの時にこの外側と内側の急激な温度差について行けず、壷の中から一方的に「膨脹」した事により、茶壷の驚破現象が起きてしまいました。

その後に私は朱泥壷と薄胎壷を中心に繰り返し実験をし、数個の壷を驚破させましたが、ある事をすれば冬場でも驚破する事無く、安心しておいしい中国茶を頂く事ができました。参考になればとアップさせて頂きます。私の場合はこれをやってから一度も驚破に遭いませんでしたが、保証ではありませんので、念の為に!

茶壷は使用する時に中に半分ほどの微温湯を入れ、蓋をして20秒ほど置いてから上から熱湯を満遍なくかけて下さい。それから中のお湯を捨て、茶葉を入れ、また一度外からお湯を注いでから中にお湯を注ぎます。要は外側と中の温度差を無くす事ですが、どっちが先にお湯をかけなければなりませんが、外側から先にかけた方が割れずに済むようです。「押し出す」と「引っ張る」の力の違いのようですが、これ以上実験すれば「犠牲品」が増えますので、やめときます。
長い間に使ってない壷を再度使われる時や、冬場などの時に注意しましょう。
   
実験で驚破させた1個目
見事に「入」という字が入っています
外から掛けるのを止めたら2つ目の犠牲品
左の作品と全く同じ壷
   
こちらは薄胎の物。いきなり熱湯を注ぐと
こんなに惨めに割れました。
こちらは青磁の装飾「開片」であり
驚破ではございません!

   
 右上の作品↑は青磁の装飾方法「開片」(英語ではCrackles)(釉面裂紋)であり、驚破ではございません!開片は宋の哥窯が始まりで、弟の嫉妬により偶然この手法が生まれたと言われています。まあ、言い伝えであって、検証する方法がありません。残念ながら哥窯と弟窯に関する歴史記載がないから「末詳何時人」と「浙江通志」では書いてあります。

もう一つの「窯裂」という現象もありますが、こちらも驚破ではございません!茶壷が窯に入れる前に、乾燥して内側にたまに裂け目ができる場合がありますが、外側に影響がなく、通常使用上特に問題ありません。たまに外まで裂けてしまう物もみかけたりします。
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ご注意!驚破という現象がよく発生する物ではありません!また私の知っている限りでは朱泥以外の驚破は聞いた事はありません。更に朱泥でも「大紅袍」という物が一番犠牲品になりやすいようです。しかし、注意さえすればと台湾の友人達が非常に良い色と艶に養壷され大紅袍の数々を見せて下さいました。収縮率10パーセント以下の紫砂は絶対驚破しないのかと聞かれそうですが、私は更に紫砂壷を冷蔵庫に入れて、翌日に取り出し、微温湯で外を温めた後に、外側から熱湯をかけてから内側に熱湯を注ぐ実験をしました。驚破することありませんでした。しかし、次に日に再度その壷を冷蔵庫から取り出し、いきなり熱湯をかけてみると、ばきっという音が聞こえ、茶壷が割れました。この場合、温度差が激しい過ぎた為に茶壷が割れました。
* 大紅袍は武夷岩茶の大紅袍ではありません。紫砂壷で使われる土の一種です。コピー商品のニセ大紅袍も多いので、注意しましょう。真似した商品もあれば、ただ真っ赤の物を勝手に「大紅袍」と名付けて売るヤツもいます。


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