---袁 枚−「龍 井」---
龍 厭 西 湖 喧 別選 蔵 珠 宅
澄 泓 一 井 泉 揺 漾 半 天 碧
葉 堕 鳥 銜 去 魚 行 人 不 隔
時 方 迎 六 龍 崖 磴 加 開 闢
穿 竇 濬 霊 源 爬 沙 出 奇 石
瀑 布 九 天 来 散 作 千 処 白
噴 珠 隕 雑 花 洒 面乱 飛 雪
傾 耳 声 洋 洋 ○ ○ 砕 環 璧
○○=[王宗][王爭] 台 高 石 柱 寒 松 古 蒼 煙 積 試 茗 人 忘 帰
水 明 天 不 夕
1763年(47歳)の作。この詩中の茗(=茶)は、もちろん龍井茶の事です。
★試訳『龍は西湖(観光名所)の喧騒にいや気がさし、別に美しいねぐらを選ぶ。それは澄んで深い一つの井戸水(龍井泉)、水面
に映るは、ゆれ漂う青い空、落ちた葉をくわえ飛び去る鳥、いきかう魚、人ともまだ縁は切れていない。時に6ぴきの龍を迎え、加えて崖は天地を開き、あいた穴は霊気の源、砂を爪でかけば宝石(水源)を出し、滝が天より舞い降りて四方に白きところ(美しき泉)を作る。あふれ出る宝玉
(水の玉)が花とまじって転がり落ち、すすぐ水面は乱れ飛ぶ雪(水しぶき)。耳を傾ければ、とめど無く広がる水音、争い向って輪の玉
を砕く(しずくが次々と落ちて輪状にはじける様子)。ひんやりとした見晴らし台。いにしえより(広がる)松の蒼い煙。そして茶を飲めば人は帰りを忘れ、余りに美しい景色に天も夕暮れを忘れる』●袁枚(1716〜1798)…浙江省杭州銭塘県の人。字は子才、号は簡斎。随園先生、袁随園とも呼ばれた清朝乾隆年間に活躍した文人で、美食家、県知事、自由人など幾つもの肩書きをもつ。有名な料理本「随園食単1792」の著書で、大衆に愛された売れっ子文人でした。当時海外にもその名は知られ、ヨーロッパや日本、琉球(沖縄)などの使節団が競ってその著書を買い求めたと伝えられます。詳しくは伝記本の「袁枚―十八世紀の中国の詩人」アーサー=ウエイリー著・加島祥造/古田島洋介:訳、1999(平凡社‐東洋文庫)を。