中国茶の世界
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中国茶と婚禮

 婚礼:親、親戚と親しい友人などに見守られて 祝福のメッセージにあふれたウェディング・ステージ。婚礼と中国茶とは一見無関係に思われがちですが、婚礼茶文化に関する記載は古くからあり、また今でも一部の地方で行われています。お茶、茶文化という物を結婚式の中にあり、結婚式に取り入れ、溶け込みます。
伝統的な結婚

・三茶六禮(Shan-Cha-Liu-Li) :
 中国の大文豪である魯迅(Lu-Xun)の小説「彷徨・離婚」の中に「我是三茶六禮定来的、花轎抬来的!」という会話がありますが、古い中国の婚礼を知らない人がきっとこの「三茶六禮」とは何でしょうかと戸惑います。まあ、今の若い中国人でも知らない人が多いと思います。
 三茶はのちほど説明しますが、六禮とは「納采、問名、納吉、納征、請期、親迎」の六種儀式。六禮についてはこの「中国茶と婚礼」と関係ありませんので、これ以上詳しく説明しません。

  伝統的な結婚式は左の写真のように、新婦は顔を隠して新郎の家まで行く習慣があります。左は新郎で、真ん中は赤い布で顔を隠した新婦、右は顔を隠している新婦の目(導く)になっている人です。嫁いり轎(花轎)に乗って行く場合もあります。とてもおもしろい儀式です。

  むかし、親の勝手で決められた結婚は、式の日までお互い相手を知らない(相手の顔を顔みない)という今の時代ではとても信じられない事がありました。


 では、早速「三茶」の説明に移して行きたいと思います。婚礼と中国茶と最も深い関係があるのは、おそらく福建省と台湾ではないかと思います。福建省と台湾(その他一部の地方)以外の中国人に聞いても、知らないと答える人が多い。私が小さい時、親戚の結婚式を何回か見た事がありました。三茶はあまりにも当たり前過ぎることなので、子供にとって、甜茶(甘いお茶)よりも飴とお菓子類の方がずっと魅力的でした(笑)。

 ・訂婚擇日敬甜茶:中国語の「訂婚」は日本語の「婚約」であり、婚約の日に甜茶が出されます。これは一回目のお茶です。甜茶とは茶湯の中に氷砂糖、桂圓肉や金桔などを使った甘味あるお茶の事です。婚約の日、男の方が禮品を持って、女の家を尋ねます。禮品は女性の家の先祖の前に祭られる為の物です。皆が座ったら、新婦となる人が男の親、親戚と未来の旦那に甜茶を出します。身分の高い方から一人ずつ出して行きます。この間、男の親、親戚と新郎になる人が、新婦となる人を「評価」(この場合は容姿と礼儀ぐらいでしょう)します。お茶を頂いたら、茶杯の下に「紅包」(お金を赤い紙で包んだ物、お正月に貰った紅包はお年玉 。祝い事によくこの紅包が活躍します)を置いて謝意を表します。

 *婚約ではなく、お見合いの時も中国茶が大活躍します。同じく女性が男性とその家族の皆にお茶を出します。普通 、出し終わったら女性がすぐ隠れてしまいます。もっと顔を見たい時にお茶のお替わりを言います。女性がまた出て来てお茶を入れてくれます。男性とその家族がこの間に女性を「評価」します。女性の親も帰られるまで、色々聞いたりして男性を評価します。帰られる時、もし男性が女性の事を気に入った場合、茶杯の下に必ず紅包を置いて帰ります。紅包が置いてない場合、このお見合いが無かった事にして下さいという意味になります。

甜茶説明
 吃茶(喫茶):直訳するとお茶を食べるという意味になりますが、福建省と台湾では、「吃茶」は「喝茶(お茶を飲む)」になります。厦門では「ling-de」とかも言ったりします。お茶を食べるのではなく、お茶を飲むという意味です。「来、吃茶」という言葉は日常の挨拶言葉のように使われています。
*新婦は「甜茶」を皆に出せば、新郎の友人や親戚(普通は既婚者のみ)から紅包を貰う事になっています。

 ・結婚喜慶請喝茶:二回目の敬茶は「六禮」の納采、問名、納吉、納征、請期、親迎が終わった、結婚式の日に行われます。結婚式の日に、親戚 や友人達がお祝いに集まり、新郎が新婦に自分の親戚と友人達を紹介し、新婦はその都度、「伯父さん、お茶をどうぞ」や「○○さんを宜しくお願い致します」と挨拶して行きます。親戚の皆がお茶を頂くと同時にお祝いの言葉を言ったり、早くも子供の話をしたりするのが普通です。お茶を飲んだらやっぱり、紅包を茶杯の下に置いておきます。

中国語説明

 ・公婆前新娘拝茶:三回目のお茶は最も重要な物で、「敬茶」という言葉ではなく、「新娘拝茶」あるいは「新娘拝堂茶」と言います。吉日に拝堂、先祖に結婚した事を報告し、公婆(新郎の両親)や新郎の両親の兄弟などいわゆる長輩に甜茶を敬います。この3回目の拝茶後は、通常「紅包」を茶杯の下に置いておくのではなく、金、銀の装飾や宝石類をお返しとして渡す事が多い。こうやって、代々伝わって行く物も多い。

三茶六禮
*中国が広い!地方によって、三茶六禮の内容が違ったりする場合もあります。上記の様に一部の地方では全然違う解釈の三茶もあります。

*また「三茶」は婚約時の「下茶」、結婚時の「定茶」、同房(夫婦生活)時の「合茶」という解釈もあります。
 
中国語説明

 客至敬茶:お客様がいらっしゃればお茶を出す。当たり前の事で、この当たり前の事を婚礼の中に取り入れ、茶葉や茶文化が礼儀の一部となりました。福建省と台湾以外にも、雲南省の少数民族の間では、訂婚(婚約)時に「茶二筒」という記載があります。雲龍の白族では「茶二斤、衣料四包......」という記載も見る事が出来ます。お茶は中国人の日常生活の中に欠かせない物で、古の格言にも、暮らしを立てるに必要な七つのものは、「薪(柴)、米、油、塩、醤油、酢、茶」と記されていますから、親が嫁いでいく娘にお茶や茶缶 を持たせる事は全然可笑しい話しではありません。唐代文成公主が西へ嫁がれる時に、茶餅を携帯して行ったとい う記載もそれを証明しています。

伝統服装 七修類稿:
種茶下子、不可移植、移植則不複生也、故女子請聘、謂之吃茶。又聘以茶為禮者、見其従一之義。
これは明の作品ですが、明以前も同じ事が言えましょう。「従一」という言葉は今となったら女性への差別 用語ですが、昔は当たり前の事でした。 「従一」つまり一生一人の男についていく、その時代の辞書には「離婚」という文字がありませんでした。茶樹は根がありますので、茶樹を持って、男の家へ嫁ぎ、茶樹と同じく根を下ろし、一生そこで生きて行くという意味です。

 「不可移植」は茶樹の移し植えが決してしてはいけませんという意味で、「移植則不複生也」:もし移し植えすればその茶樹が死んでしまいます。とも書いてあります。陸羽の「茶経」でもこの事について述べてありますが、移植してはいけないという肯定的な書き方ではありません。昔の技術では難しいかっただけでしょうか?
 その難しかった茶樹の移植は、古代の男達が都合よく結婚に使ったのではないかと思います。まあ、私の親の時代でも、離婚という言葉は決して、軽々しく口にしませんでした(我慢が一種の美徳のようで)。どっちが良いのかは、考えそれぞれです。また、今回の話題と関係ないので、これ以上は述べません。(^_^)


 ・一女不受両家茶: 従一と同じ考えです。二人の男からお茶を受取ませんという。生きている内にずっと一人の男について行くという考えです。

 ・黄金桂の移植: 黄金桂、黄旦とも呼ばれています。1860年、安渓の林祥琴青年が西坪の女性王さんと結婚し、王さんが実家から「帯青」という習俗に従い、植物苗の野生茶樹を持って林祥琴青年の家に嫁ぎました。その茶樹を林祥琴青年の家の裏山仁植え、のち程の黄金桂の第一号になったとか。残念な事に、1967年に植え替えが行われた為、この黄金桂の茶樹が死んでしまいました。

 私が物事が分かっている時に、もう茶樹を持って嫁ぐ風習がなく、代わりに2メートルぐらいもあるサトウキビ2本(まるごと)に赤い線を巻いて持って行く人が殆どでした。もちろん、2002年の現在でも、この風習も変わらずやっているそうです。ただ、福建省と言っても広いので、方言がたくさんあると同時に、習俗も当然違いますので、全ての地方に当てはまらない事を補足しておきます。

 ・交杯茶、和合茶、謝恩茶、認親茶: 新郎と新婦がお互いに交換するお茶は「交杯茶」、「和合茶」、親や年配の人に敬うお茶は「謝恩茶」、「認親茶」です。訂婚、結婚は「受茶」、「吃茶」、婚約の定金は「茶金」、彩 禮の事を「茶禮」とお茶という言葉と密接な関係にある事を表します。

*中国でもハンバーグとコーラに憧れた現代では、都会では伝統的な服装を着て、伝統的な結婚式を挙げる人が減っています。古くから中国ではメデタイ時は「紅」を使い、哀しい時は「黒と白」が多いのですが、今は白のウエディングも受け入れるようになりました。伝統服装数点もアップしておきますので、参考になれば幸いです。


ミンタイ婚俗

*上は福建省と台湾の「茶禮」についての記事です。中国語が読める人は合わせて参考にして下さい。地方によって解釈が微妙に異なりますが、「茶」という文字から離れていないのが何処も共通のようです。

 


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