お茶と水
お茶をより美味しく点てる為の水選び
|
お茶の神様「陸羽」が著書「茶経」の「五之煮」(下巻)で「其水、用山水上、江水中、井水下」と書き、陸羽の後にも張又新が「煎茶水記」の中でも使用する水によって茶湯の色、香りと味が変わるだと水の大切さを強調。良いお茶があっても良い水がなければ、美味しいお茶を煎れる事ができません。 |
|
80点の茶葉、100点の水に遇うと、お茶の味も100点
逆に80点の水で、100点の茶葉を試すと、お茶も80点で終わる
|
|
日本は蛇口をひねれば水が飲める、世界でも数少ない安全な水の国だと言われています。中国茶を淹れる時、水にまでこだわる人はまだまだ少ないように思いますが、水によってお茶の香りや味が変わることが事実です。というわけで水に関して少しだけ説明しておきます。興味ある方はぜひ読んで、また実際に試してみてください。 |
水には「軟水」と「硬水」があります。 |
水の中に含まれるカルシウムとマグネシウムの量を硬度と言います。単位はdH(ドイツ硬度)またはppm(アメリカ硬度)で表します。アメリカ硬度は、水1L中に含まれるカルシウムとマグネシウムの量を、炭酸カルシウム(CaCO3)の濃度に換算した重量(mg:ミリグラム)です。ドイツ硬度は、水100mL中の酸化カルシウム(CaO)の重量(mg)に換算したものです。ドイツ硬度とアメリカ硬度の関係は 1dH=17.8ppmで表されます。硬度の低い水を軟水、逆に高い水を硬水と呼びます。 |
・ |
軟水 |
硬度 0〜 60mg/L未満 |
中程度の軟水 |
硬度 60〜120mg/L未満 |
やや硬水 |
硬度120〜180mg/L未満 |
硬水 |
硬度180〜300mg/L未満 |
きわめて硬水 |
硬度300mg/L以上 |
|
・
|
ミネラルの含有量の高い硬水を使った場合、茶湯の色が濁ってしまい、見た目が非常に悪くなり、また味と香りにも影響しますので、適しているお茶が少ないように思います(例外もありますが)。日本はほとんど軟水なので、ミネラルウォーターを買ってきてお茶を煎れる場合、海外物よりも国産物の方が良いかと思います。ミネラルの含有量の高い輸入物を使うより、水道水の方がおいしく淹れられる場合がよくあります。しかし、硬水が使えないというわけではありません。307mg/Lの硬水を使って深焙煎の鉄観音や岩茶の大紅袍(伝統製法)を淹れて見たら、茶湯が濁りましたが、超軟水より美味しいと試飲した数人の意見が一致しました。 |
pHとは水素イオン濃度のことです。水を酸性、中性、アルカリ性の程度で示す指標です。pHの値には0〜14までの目盛りがあり、7を中性もしくは化学的中性点とも言います。7より小さくなるほど酸性が強く、7より大きくなるほどアルカリ性が強くなります。
水道水がダメではありません。場所によって浄水器なくても水道水のままで十分おいしい所もあります。逆に水の流れ(使用量)が少ない会社ビルの受水槽からの水がお世辞にも美味しいとは言えません。この場合、せっかくの高級茶葉なので、ミネラルウォーターの方が良いのではと思います。 |
|
|
|
■水中の空気
水を沸かす事も非常に難しいとされ、宋代の蔡襄が著書「茶録」の中で「候湯最難」と書いてあり、水が沸く前から沸く時の音を段階的に聞き分け、松声、蟹目、魚眼、連珠、鼓浪といろんな言葉を使い、火を止めるタイミングの大切さを説いています。
水中に溶けている気体の含有量が高いほど、香りがよく、すっきりとした味のお茶を淹れることができます。沸かしすぎてはいけないとよく言われるのは、沸かしすぎると水中の空気の成分が逃げてしまうからです。沸騰させすぎた水は「死水」と呼ばれます。死んだ水なので、当然おいしいお茶を淹れる事ができません。
|
|
・
・水は沸騰し過ぎないように注意しましょう。100度まで計れる温度計を用意し、水が沸く直前に気泡のような物が出来ますので、最初の頃は温度計を見ながら覚えましょう。この気泡のような物は古人は「蟹眼」、「魚眼」や「連珠」という言葉を使って説明しています。陶器の煮水器を用いて、家庭のガスコンロで、「蟹眼」が出た時に82〜85度ぐらいで、「魚眼」に変わった時に88〜90度ぐらい、「鼓波」になったら92〜95ぐらいなので、すぐに火を止めましょう。これ以上沸かし続けると水中の空気が減って行き、陸羽が「水老、不可食也」と「茶経」の中に書いてあります。
・お茶を淹れる時に、お湯は極力高い所から注ぐのも、良い方法です。しかし、高い所からだとお湯の温度が低くなってしまう恐れがあります。これを補う為に、茶葉を茶壷に入れる前に「温壷」して置く事が大事です。また、蓋をした後に再度お湯をかける事によっても多少補えます。
・お茶を茶海に注ぐ時や茶海から茶杯へ注ぐ時も少し高い所からという方法があります。但し、お茶の香りが逃げる欠点があります。また、もし「死水」で入れた場合、ここでの作業は殆ど意味がありません。
・南部鉄瓶の製造元では、このような推奨もあります:一晩汲み置いた水を沸かす直前に鉄瓶に移し、沸かす際には、フタを取った状態で3分間余計に沸騰させることで、カルキの抜けたまろやかでおいしいお湯ができるそうです。 |